【宝石の見分け方】 鑑別⑦ 屈折率の測定 【鑑定】

宝石 鑑別

宝石を鑑別する場合に行う基本的な検査の一つである屈折率の測定方法を解説します。

  • 屈折率の測定とは
  • 屈折率の測定に必要な道具
  • 屈折率の測定ポイント

屈折率の測定とは

宝石屈折計を使用して屈折率を測定する事です。
宝石の屈折率はそれぞれ違うため、屈折率を確認することで宝石を特定できます。

それではまず屈折と屈折率・複屈折量について近山晶先生の宝石宝飾大辞典より引用させていただきます。

引用

屈折 refraction

媒質の中を進む光が、平滑な境界面を越えて、異なる媒質中に進む場合、あるいは同一媒質でも条件によって波の速度が変化する時、その進行方向が変わる現象をいう。2つの等方性の媒質の境界線での屈折については、屈折の法則が成り立つ。
また等方性媒質から異方性の媒質に入る場合には、2つに分かれて複屈折の現象を示す。

屈折率 refractive index

光が第1の媒質から第2の媒質との境界面に入射して屈折する時、入射角iと屈折角r の間には、屈折の法則n=sini/sinr が成り立つ。
この定数nを策1の媒質に対する第2の媒質の相対屈折率、または単に屈折率(R.I.)という。
通常その媒質の屈折率を示す場合には、真空に対する相対屈折率を用い、絶対屈折率という。
気体の真空に対する屈折率は、ほぼ1に等しく、空気の絶対屈折率は1.0028なので 光はほとんど屈折しない。
それゆえ、通常屈折率を 考える場合、空気を1とした対空気屈折率を便宜上 用いてもさしつかえない。
各媒質において、光の波長ごとに異なった値を示すので、ナトリウムD線( ナトリウムランプ、9フラウンホーファー線)の黄色の単色光の波長の屈折率をその媒質の屈折率とする。
等方性の媒質は常に1つの屈折率しかもたないが、異方性の媒質つまり複屈折性結晶に入射した光線は、2つないし3つの屈折率を持っている。

ふくくっせつりょう 〔複屈折量〕 birefringence

複屈折率ともいう。
複屈折性の結晶の示す屈折率の最大値と最小値の差を複屈折量という。
正方晶系と六方晶系に属する一軸性結晶は2つの屈折 率をもち、結晶内のどの方向でも常に一定の数値を示す通常光屈折率 ( で表す) と、方向によって数値の変動する異常光屈折率 (で表す)とがあるが、その両者の差、つまりω との差の数値が複屈折量である。
それは更に、正号晶と負号晶とに分けられる。
斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系に属する二軸性結晶は、3つの異常光屈折率を持つ。
3つの屈折率のうち、最小値を、中間値をβ、最大値をγで表すが、その最大値と最小値との差、つまりγαの差の数値が複屈折量である。
宝石鑑別に際し、屈折率測定において、この複屈折量まで正確に求めることは、より確実な結果が期待出来るので、ゆるがせに出来ない事項である。

宝石宝飾大辞典新訂第3版 著者 近山晶氏

宝石にはそれぞれ特徴があり、屈折率も違います。屈折率を確認することでその宝石が何なのかを特定していく事ができます。

屈折率の測定に必要な道具

宝石屈折計を使用します。

光源は偏光器の光またはペンライトを使います。
屈折計の後ろから光が入る構造になっております。

屈折計について近山晶先生の宝石宝飾大辞典より引用させていただきます。

引用
屈折計

屈折計には用途、タイプによって種々のものがあるが、通常の宝石用屈折計はいわゆる全反射屈折計であり、その測定媒質の屈折率と全反射の臨界角とは比例の関係にある原則を応用して、その臨界角を測定し、その屈折率を求める方式のものである。
全反射の原理によるために、そのプリズムは測定されるべき宝石よりも、屈折率の高いことが絶対の条件で、通常のタイプでは屈折率1.81の高屈折プリズムが使用される。
プリズムと宝石面との光学的接触のために、プリズムと同じ屈折率の接触液が用いられる。
ダイアモンドやダイアモンド・シミュラーのような、屈折率が1.81を超す宝石は, このタイプの屈折計では測定不能である。

宝石宝飾大辞典新訂第3版 著者 近山晶氏

接眼部分には偏光版がついてます。
これを90度回転させることで複屈折量が確認できます。

宝石屈折計を見ると中に目盛りがあるのが確認できます。この目盛りが屈折率を表します。
1.81までの屈折率を測定できます。

屈折率の測定ポイント

屈折率の測定方法としては通常の測定方法とスポット法があります。
宝石のカットの面が屈折計に当たるようなカットの場合は通常の測定方法で行います。
宝石がカボションのような面がないタイプやカットされている面が非常に小さい場合はスポット法を行います。

それではスポット法について引用させていただきます。

引用
スポットせっしょくほう 〔–接触法〕 spot contact method

アメリカのL.B. ベンセンによって考案されたカボションなど曲面の研磨面の屈折率の測定法である。
曲面と高屈折率プリズムとの間に、屈折液の1滴をつけて点接触により測定するので、アメリカにおいては、主 にスポット・コンタクト法といわれる。
また測定は接眼レンズから眼を30cm以上離して読み取るので、イギ リスにおいて主にディスタント・ビジョン法と呼ばれている。
sp法と略称されることも多い。

宝石宝飾大辞典新訂第3版 著者 近山晶氏

通常の測定方法

①屈折液をガラス部分にほんの少しだけ落とします。

②確認する宝石を屈計の屈折液をつけたガラス部分に置きます。

③蓋を閉じてレンズを確認します。

④測定のたびに偏光板を0度の状態と90度回した状態で確認します。
偏光板を回すとメモリの値を示す影が動きます。
この影の動きが複屈折量となります。

⑤確認が終わったら蓋を開いて宝石を45度回して計5回測定します。

⑥計測が終えたら平均値を出し、屈折率を確認します。
偏光板を回す前の5回の平均値と偏光板を回した後の5回の平均値を出します。
・偏光板を回す前の平均値 1.763
・偏光板を回した後の平均値 1.772
そしてその数値に該当する宝石を調べます。

サファイアの屈折率(R.I.): 1.760 – 1.768 から 1.770 – 1.779
複屈折量(D.R.):0.008 – 0.009

数値の範囲内ですのでこの宝石はサファイアになります。

スポット法

カボションカットの翡翠(ひすい)を使って確認します。
スポット法の場合は偏光板は外して行います。
そのため複屈折量は計測できません。

①屈折液をガラス部分にほんの少しだけ落として宝石を置きます。
カボションカットの丸い部分を下に向けてセットします。

③蓋を閉じて目の位置をレンズと平行に動かして、レンズの中の宝石の影を確認します。
レンズと目の距離は20cmから30cmぐらいが目安です。

③宝石の影が全体から半分に欠ける場所を確認します。

その欠けたところの数値が屈折率となります。

翡翠(ひすい)の屈折率(R.I.): 1.650 – 1.680です。
複屈折量(D.R.):はスポット法の場合はありません。

屈折率がわかればほぼ宝石は確定できます。

しかしサファイアやルビーの場合は合成石の可能性もあります。
(合成石の場合でも同じ屈折率を示します)

屈折率の測定だけではなく他の検査も行い結果を総合的に確認してその宝石が何かを判定します。

以上「【宝石の見分け方】 鑑別⑦ 屈折率の測定 【鑑定】」でした。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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