【宝石の見分け方】鑑別③ 偏光検査【鑑定】

宝石 鑑別

宝石を鑑別する場合に行う基本的な検査の一つである偏光検査の方法を解説します。

  • 偏光検査とは
  • 偏光検査に必要な道具
  • 偏光検査のポイント
  • 実際に宝石を偏光器で確認してみた

偏光検査とは

宝石の単屈折と複屈折について調べる検査です。

それではまず偏光検査や単屈折・複屈折について近山晶先生の宝石宝飾大辞典より引用させていただきます。

引用
へんこうけんさ(偏光検査) polarization test

偏光を利用してのその宝石の屈折性つまり単屈折性であるか複屈折性であるかの検査は、屈折率測定に付随して行われる宝石鑑別における有効かつ簡便な検査である。
偏光検査には宝石偏光器(偏光器)が用いられるが、偏光子と検光子を上下に組み合わせた装置である。
偏光子を通過した光線は、一定の方向にだけしか振動しない偏光となる。
偏光子に対して、検光子が平行位置に置かれた場合は平行偏光というが、 偏光子からの偏光は、検光子をも通過して同方向の偏光として進行する。
偏光子に対して検光子が直交位置に置かれた時、つまり直交偏光の場合には、偏光子からの偏光も、直角方向だけを通す検光子に通貨を妨げられて、光は消滅した状態に見える。
通常の偏光検査は、この直交偏光の状態で行われる。
偏光子と検光子との間に検査石を入れて回転させた場合、その回転位置によって、45°ごとに明暗を明らかに示す (消光位)ものが、光学的異方性(異方性)つまり複屈折性の宝石である。
これに対して光学的等方性(等方性)つまり単屈折性の宝石は、回転による明暗の変化を全然示さない。
このように偏光検査では、検査石の回転による明暗の有無で、単・複屈折性が一見して判明する簡便さがあるが、この検査は透明な単結晶質に限られ、光の透過の悪い宝石や微結晶の集合体の潜晶質の宝石には適用出来ない。
また異常複屈折の宝石、例えば天然ガーネットや合成スピネルは、本来単屈折性であるにもかかわらず、複屈折性に類似する所見を与えるので、検査に際して注意を要する。

たん屈折(単屈折) single refraction

光(自然光)が光学的に等方性の媒質に入射して屈折する時は、常に一定の屈折率を示す。
これらの入射した自然光は、単に屈折するだけで、媒質内の通過光は速度も変化しない。
また入射前と同じように、進行方向に垂直な平面内であらゆる方向に振動していて、光の振動も変化しない、つまり偏光にはならない。
このように、1つの屈折率のみ示す現象を単屈折という。
異方性つまり複屈折の性質を持つ結晶でも、その光軸の方向では単屈折性を示す。

ふくくっせつ[複屈折) double refraction

光(自然光)が、光学的に異方性の媒質に入る時、光軸以外の方向では、1方向に2つの屈折率があり、それぞれに対応した2つの屈折光に分かれる現象をいう。
非晶質と等軸晶系以外の全ての宝石に入射した自然光は、2つの異なった速度で分かれた経路に進み、しかも互いに直交する振動方向をもった2つの偏光に分かれてこの現象を示す。
2つに分かれた光は、通常光と異常光である。

こうじく 〔光軸] optic axis

光学軸ともいう。
光学的に異方性、つまり複屈折性の結晶においては、一般に1つの方向に2つの屈折率を持つ。
この2つの屈折率の差、すなわち複屈折量は方向によって変化するが、ある特別の方向においては異常光の屈折率が通常光に一致して、その量は0となる。
このような特別な方向を光軸という。
光軸の数が1つの一軸 性結晶と2つの二軸性結晶とがある。
一軸性結晶では光軸は主軸(軸) と一致する。 二軸性結晶で2つの光軸を含む面を光軸面といい、2つの光軸の間の角を光軸角という。

宝石宝飾大辞典新訂第3版 著者 近山晶氏

宝石にはそれぞれ特性があり単屈折の宝石と複屈折の宝石があります。
それらを確認することでができれば宝石を見分けるヒントになります。

偏光検査に必要な道具

宝石偏光器を使用します。

それでは偏光器についてふたたび近山晶先生の宝石宝飾大辞典より引用させていただきます。

引用
へんこうき [偏光器〕polariscope

偏光子と検光子とを組み合わせて偏光検査に用いられる装置をいう。
普通は偏光プリズムや人造の偏光板を2枚使って作られる。
偏光顕微鏡も偏光器の一種と見なされる。
宝石鑑別のための偏光器は、ポラロイド・フィル ターを2枚組み合わせた装置で、光源に近い側(下部) が偏光子であり、上部のものが検光子である。

宝石宝飾大辞典新訂第3版 著者 近山晶氏

偏光検査を行う場合このような宝石鑑別用の偏光器を使用いたします。
偏光板が上下1枚ずつセッティングされています。下部分の偏光板の所にあるスイッチを押すとライトが点灯します。

上部分の偏光板を回転させることで点灯されていたライトが黒くなります。(クロスポジション)
その状態で検査を行います。
石を回転させると複屈折の場合には45度ごとに色に明暗が現れます。単屈折の場合は変化がありません。

偏光検査のポイント

周りは暗いほうが確認しやすい

宝石の内部の明暗を確認する検査ですので暗くしたほうが見やすいです。

光を透過できない石は判別できない

トルコ石やラピスラズリなどの不透明石は判定はできません。

実際に宝石を偏光器で確認してみた

では実際に偏光器を使用して反応を確認します。

天然ルビーと合成ルビー(両方とも複屈折)


天然ルビーの場合

合成ルビーの場合

天然ルビー・合成ルビーともに45度ごとに明暗が現れます。

ガラス玉と水晶玉(単屈折と複屈折)


ガラス玉の場合(単屈折)

単屈折の宝石はダイヤモンドやガーネットやガラスなどが挙げられます。
複屈折の宝石に比べ種類は少ないです。
ガラスやプラスチックなどでは内部の歪みから起こる十字やまだらな影が見える場合があります。
複屈折の明暗とは違い、ほぼ変化はありません。
宝石かガラスかを見分ける際には偏光検査を行えば見分けやすいですね。

水晶玉の場合(複屈折)

複屈折特有の影ができます。そして影の中心に赤い丸が現れます。
この赤い丸が水晶玉とガラス玉を見分けるポイントです。
そして赤い丸はこの水晶玉の光軸になります。

偏光検査だけではなく他の鑑別基本検査も行い、それぞれの検査で確認できたことを総合的に判断する事が宝石を見分ける上でとても大切です。

以上「【宝石の見分け方】 鑑別③ 偏光検査 【鑑定】」でした。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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