【宝石の見分け方】鑑別⑥ 比重検査【鑑定】

宝石 鑑別

今回は宝石を鑑別する際に必要な検査の一つである比重検査の方法を解説します。

  • 比重検査とは
  • 比重検査に必要な道具
  • 比重検査のポイント
  • 実際に宝石の比重を測定してみた

宝石の比重値を調べる検査です。
宝石は種類によってそれぞれ比重値が違います。比重値を確認することでその宝石を見分けるヒントになります。

それでは比重と比重測定法について近山晶先生の宝石宝飾大辞典より引用させていただきます。

引用

ひじゅう(比重) specific gravity

物質の重さと、それと同体積の標準物質の重さとの比をいう。
標準物質としては、普通、4℃の純粋な水を用いる。
気体の時は普通、0℃、1気圧の空気を用いる。
なお比重は、同じ物質でも、温度や圧力(気体の場合)によって異なる。

ひじゅうそくていほう(比重測定法) measuring specific gravity

宝石類の比重測定法には主に次の2方法が採用されている。
宝石貴金属比重計、もしくは普通の天秤に水中重量測定液テスト用の部品を設置して測る静水法(水中重量測定法ともいう)と、重液を用いて宝石の比重近似値を求める重液法とがある。

宝石宝飾大辞典新訂第3版 著者 近山晶氏

・比重とは宝石の密度と水の密度との比です。
・密度とは単位体積当たり質量です。

比重=物質の質量 / 同一の体積を有する水の質量

比重検査に必要な道具

宝石の比重を測定する場合、引用にもありますが「重液法」「静水法」の2つの方法があります。

重液法と静水法について再度宝石宝飾大辞典より引用させていただきます。

引用

じゅうえきほう(重液法) heavy liquids method

宝石の比重は、ほとんど2.65から4.00の比重値の 間に集中している。
これらの比重値の範囲で、重液 標準値で数種類準備しておき、その各液中での検査石の釣合い、あるいは浮沈の状態を見て、その比重近似値を求める。
宝石個々の比重をいちいち測定する面倒さはなく、簡便,迅速に検査出来る利点がある。
特に多数個もしくは小サイズ石などで、個々の比重測定が困難な場合に有効である。
一般的には、次の5種類の標準重液を準備して鑑別に用いる。

●No.1液;比2.65, ブロモホルムをトルエンで薄める(標準石は水晶)。
●No.2液; 2.88, ブロモホルム原液。
●No.3液; 3.05, メチレン・アイオダイドをトルエ ンで薄める(標準石はトルマリン)。
●N4液; 比3.32, メチレン・アイオダイド原液(標準石はジェダイト)。
●No.5液; 4.00, クレリチ溶液(標準石はコランダム)。

せいすいほう(静水法) hydrostatic weighing

比重測定法の1つで、 最も一般的な方法である。
水中重量法ともいう。アルキメデスの原理によれば、空気中の重量と水中の重量との差が、水中で軽くなった重量であり、それがその物体の体積に相当する。
その原理により、検査石の空気中の重量と更に水中で玉石貴金属比亜計の重量を計算し、次の式のように重量を決定する。
比重(S.G.)=(宝石の空気中の重量)(空気中の重量一水中の重量) 水中重量の測定のため、通常の天秤に水を入れるビーカー台を設け、宝石を水中に吊り下げるためのバスケット、それのバランスをとるためのワイヤー錐を準備する。
この目的のために設計された宝石貴金属比重計を用いれば、測定に便利である。

宝石宝飾大辞典新訂第3版 著者 近山晶氏

重液法の場合はブロモホルムやメチレンなどの重液が必要です。

静水法は宝石を水に沈めて重量を計算する方法です。
そしてこちらは貴金属や宝石の比重を計測する宝石貴金属比重計です。

買取屋さんや質屋さんに行くとこのような器具を目にすることも多いと思います。
この器具は静水法で比重を計測します。

比重検査(静水法)のポイント

重液法の場合はそもそも専用の5種類の標準重液が必要ですので用意するのが大変です。
そのためよく使われている静水法についてのポイントを解説します。

比重検査は宝石がルース(裸石)の場合しか計測できません


指輪やネックレスなど貴金属にセッティングされている宝石の場合、検査の方法から比重値を確認することはできません。
専門の鑑別機関でも指輪などにセットされている宝石の比重検査は「セットのため不可」のような表記がされます。

そして買取店や質屋さんなどの現場では、持ち込まれるのはほぼ貴金属にセッティングされている状態ですので宝石のみの比重を計測することはまずありません。
(貴金属の買取の場合は比重検査をよく行います)

静水法は重液法に比べて便利な方法ですが問題点が2つあります

  • 0.1gの違いが大きな誤差となる
  • 宝石がとても小さい場合は計測が不可能

数値の誤差が出ると結果の値が大きく変わります。
例えば水中に吊るして計測する時にエアコンなどの風の影響で0.1ぐらい動きが出たりすることもしばしばあります。

仮に重量4gで水中の値が1.5で計算した場合、4.0 / 1.5 = 2.6… となります。
これが水中の値が1.4の場合、4.0 / 1.4 = 2.857..となり、誤差が生じます。
この小数第1位の誤差が宝石の場合大きく影響します。

また、宝石の重さがほとんどないような小さい場合も数値に誤差が生じやすくなります。
(宝石の重さの単位は1カラットで0.2gです)
そういった場合は重液法を使って確認を行います。

実際に宝石の比重を測定してみた

今回はこちらのサファイアを使って確認します。
サファイアの比重値は3.99~4.05です。

比重値の測定の流れ

①電源ON
電源が入ってから液晶の数値の部分がいろいろと表示されますので、それが終わるまで待ちます。

②通常の重さを計測
この上の部分で通常の重さを測ることができます。
サファイアの重さは4.84gでした。

③比重計に重さをメモリー
ボタンを押して比重計に通常時の重さを記憶させてください。

④水中に沈める
静かに水中の網の部分に置きます。
気泡などがついた場合はピンセットなどではじくか揺すって取ります。
静かに揺れが収まるように待っていると水中での重さが液晶に表示されます。
水中でのサファイアの重さは1.21gでした。

⑤比重を計測する
ボタンを押すと比重計が計算を行い、比重値を表示します。

宝石の重さを水中で計測した数値で割ると比重値となります。

4.84g / 1.21 = 4

サファイアの比重値は3.99から4.05ですのでOKですね。

比重検査だけではなく他の鑑別検査も行い、それぞれの検査で確認できた事を総合的に判断する事が宝石を見分ける上でとても大切です。

解説は以上です。
最後までご覧いただきありがとうございます。

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