【宝石の見分け方】 鑑別① 拡大検査 【鑑定】

宝石 鑑別

宝石を鑑別する際に必要な検査の一つである拡大検査の方法を解説します。

  • 拡大検査とは
  • 拡大検査に必要な道具
  • 拡大検査 3つのポイント
  • 実際に宝石を拡大して確認してみた

拡大検査とは

拡大鏡(ルーペ)や顕微鏡を使用して宝石の内部を拡大し、内部に含まれる特徴的な含有物を調べる検査です。

宝石の内部にどのようなインクルージョン(内包物)が含まれているのかを確認します。


天然ルビーの液体インクルージョン


天然ルビーの結晶インクルージョン

また拡散処理や含浸処理、合成石や模造石によく見られる気泡やカーブラインも拡大検査を行うことで確認できます。


天然ルビーを拡散処理した際に生じるスノーボール

拡散処理されたサファイアの内部の動画はコチラ


合成サファイアによく見られるカーブライン


模造石によく見られる気泡

宝石にはそれぞれ特徴があり、内包物(インクルージョン)や状態もいろいろです。
宝石の状態や内包物を確認することができれば宝石を見分ける重要なヒントになります。

ではまず初めにインクルージョン(内包物)について近山晶先生の宝石宝飾大辞典より引用させていただきます。

引用
インクルージョン inclusion

インクルードされたもの、つまり内包されたものという意味で、内包物あるいは包有物などの名称でも呼ばれる。
鉱物や宝石の内部にあって、その主結晶(時に非晶質であっても)のそれ自体とは相違した形態、すなわち固体(大部分は他種鉱物の小結晶)、液体もしくは気体、時にはそれらの混合した形態を持つ物質で、肉眼もしくは拡大検査によりその存在が認められるものをいう。
もし主結晶中に他成分物質が含まれるとしても、その形態的存在が認められない場合は含有であり、内包とはいえず、当然インクルージョンとは称せられない。
また、主宝石(ホストジェム)中の結晶インクルージョンは主として他成分鉱物(ゲストミネラル)類の内包がほとんどであるが、例え同種の鉱物同士であっても、例えばダイアモンド中のダイアモンド結晶のように内部結晶の輪郭や、あるいは相互の僅かの色調の差のためにその存在が認められるものはインクルージョンとみなされる。

宝石宝飾大辞典新訂第3版 著者 近山晶氏

宝石には様々なインクルージョンがありますが、よく見かけるインクルージョンは結晶インクルージョン・液体インクルージョン・針状インクルージョン・シルクインクルージョンです。

それではそれらのインクルージョンについて再び引用させていただきます。

引用
けっしょうインクルージョン〔結晶–] crystal inclusion

固体インクルージョンのほとんどは鉱物質であり、その大部分は結晶インクルージョンである。
それらは最も変化のある形態をもち、その鉱物種の違いにより形状や鉱物色に多様な特徴が観察される。
これらは主に、母体である主結晶 (ホスト・ジェム) とは異種の鉱物質のインクルージョン (ゲスト・ミネ ラル) である。
しかし場合によりその輪郭が見え、その存在が認められる同種の結晶インクルージョンも ある。
これらの形状の変化は極めて多様性を示し、 自形を示す場合もあるが、多くの場合その生成過程中に変質や変化を受けて、
角に丸みを持つ蝕融の形状や欠損による破片状や塊状、粒状、更に板状、薄片状など本来の形を失って不規則形を示す。
またこれらが集団形で不明瞭な形状を持つものもある。
これらのインクルージョンの個々の名称にはルチル・インクルージョンのようにその鉱物種明で呼ばれるものと、
シルク・インクルージョンのようにその分布、配列の形態的特徴によって名付けられたものとがある。

えきたいインクルージョン [液体–〕  liquid inclusion

宝石中の液体インクルージョンを生成的にみると、固体インクルージョンのような原生的なものはなく、
同生的な生成の第一次生のものと、後生的な第二次生のものとに分けられる。
第一次生の液体インクルー ジョンの多くは, 主結晶の形成間に、
結晶空間に残存した母液が生成過程にある結晶面に付着したまま残されたものがほとんどであり、
時には他成分の溶液、あるいは気体 (後に液化) によって生成される。
それゆえ、その主結晶の結晶構造に支配されて、平面的な分布で、しかもその結晶軸方向に平行な配列を見せる。
第二次生の液体インクルージョンは通常、無数に広がる顕微鏡的な不規則な液体小滴の分布よりなり、
主結晶の結晶方位に無関係にその位置を占める。
不規則な広がりを見せる液体インクルージョンは、総称してフェザー・インクルージョンと呼ばれることがある。
それらの分布形態をより的確に特徴的に表現するために、
メッシュ (網目) 状、フィンガー・プリント (指紋) 状、翅 (昆虫の羽根) 状、ウィスプ(煙草の煙) 状、ベール状(薄布状)などと形容される。
通常の液体インクルージョンの他に、それの変化した形態としてネガティブ・クリスタル、2液の液体インクルー ジョン、
二相インクルージョン、三相インクルージョン、チューブ・インクルージョン、液膜インクルージョンがある。

はりじょう 〔針状〕acicular

小さな結晶が一方向 (主に主軸方向) に長く伸びて、針のような細い尖った形状の晶癖を示すもの、及びそれらの集合体をいう。

はりじょうインクルージョン(針状–〕needle inclusion

ガーネット中のルチル・インクルー ジョン、水晶中のトルマリン・インク ルージョンなど、その主宝石 (ホス ト・ジェム) のいずれでも、またインクルージョンの鉱物 (ゲスト・ミネラル) の種類にかかわらず、細い針状で内包されているインクルージョンの全てに適用 される呼称である。

シルク・インクルージョン silk inclusion

ミャンマー及びスリランカ産のルビー、サファイアの典型的な特徴の1つは、ルチル・インクルージョンの一様な分布が多く見られることである。
この細い絹糸状のルチルの針状結晶は、固溶体分離による後生インクルージョンとして、必ず主結晶の結晶構造に基づいて、六角柱面に対して平行な方向、つまり厳密に120度に交差して密度高く配列し、しかも主軸 (c軸)に垂直な面上で平面的に交差し、かつ積層的に分布する。
この細い針状結晶の密度の高い分布は、絹糸状もしくは絹布状の外観を与えるところからシルク・インクルージョンの名が与えられている。
シルク・インクルージョンの密度高い全面的な分布は、コランダムにアステリズムの効果を与えるための重要な組織である。
シルク・インクルージョンより更に短小なルチル結晶の密集に対しては、ダスト・インクルージョンの名称が適用される。

宝石宝飾大辞典新訂第3版 著者 近山晶氏

宝石は自然にできた鉱物ですので基本的にインクルージョンはあります。それが天然の証でもあるのです。

拡大検査に必要な道具

倍率が10倍のルーペとペンライトを使用します。

10倍ルーペでインクルージョンが確認できるかが判断の基本です。


宝石を見るときにはペンライトは基本的に黄色い光のものを用意します。

LEDライトは光の質が違うので色の変化が確認しづらい場合があります。LEDライトはインクルージョンを確認する場合には適しておりますので、状況によって使い分けをします。

宝石専用の20倍と40倍の倍率がある宝石顕微鏡です。

両方とも今は亡き全国宝石学協会の払い下げです。

20倍顕微鏡は両眼で見ることができるのでとても使いやすいです。
また宝石専用ですので宝石を固定するクリップがついていたり照明がついているので非常に見やすいです。
しかしながら倍率が上がるほど宝石のピントを合わせるのが難しくなります。
10倍ルーペとペンライトは必須ですが、20倍と40倍の顕微鏡はあれば宝石を確認しやすくなります。

拡大検査 3つのポイント

ルーペを目の近くに固定して対象物を動かしながらピントを合わせて確認する


ルーペを動かして見るのではなく宝石を動かして見る感じです。また、両目は開いてみたほうが目が疲れにくいです。

内包物(インクルージョン)を見るときは光を透過させると見やすくなる

鑑別検査の場合はペンライトの黄色い光が基本になりますが、宝石内部を確認するときは通常のペンライトよりもLEDライトのほうが明るくて見やすいです。
宝石の上から光を当てるより下から透かす感じでライトを当てると内部が見やすくなります。

目に直接当てるとキケン


ペンライトやLEDライトで宝石を見る際は目に光が直接当たらないように注意してください。

実際に宝石を拡大して確認してみた

それではよく見かける宝石の内部を拡大したものをご紹介します。

ダイヤモンドのインクルージョン


天然ルビーの双晶面と液体インクルージョン


天然サファイアの色帯


天然エメラルドの液体インクルージョン


天然翡翠の繊維状組織

拡大検査だけではなく他の鑑別検査も行い、それぞれの検査で確認できた事を総合的に判断する事が宝石を見分ける上でとても大切です。

以上「【宝石の見分け方】 鑑別① 拡大検査 【鑑定】」でした。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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